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【ロー】塩と砂糖をこっそりチェンジ!

「…………。」

濡れた髪の毛の先からポタポタと雫が垂れ落ちても拭うことをせず、折角温まった体が冷めゆくと分かっていても衣服を身に纏いもせず、私は脱衣所にて直面した信じ難い現実に唯唯目を瞬かせていた。

拍手[6回]


落ち着いて今までの流れを振り返ろう。
その日、夕食を済ませた私はペンギンとシャチと共にトランプをして暇を潰していた。私が3度目の大貧民となったところで丁度ベポがやってきて「お風呂が沸いたから先に入ってきなよ」と私に勧めてくれたのである。そのお言葉に甘えて私はベポにカードと共に罰ゲームの尻字を託し、一旦自室に戻って着替えを準備しお風呂場へと向かったのだ。
湯船に浸かれば丁度良い湯加減とリラックスソープの香りで一日の溜まった疲れがじんわりと癒される。そうしてついつい長湯してしまい寝こけそうになった私はそろそろ上がるか、と逆上せ気味の体を起こした。
冷蔵庫にプリンがあった筈だからお風呂上がりに食べようなんて鼻歌を歌いながらバスタオルで濡れた体を拭い、そして下着に手を伸ばそうとしたのだが…

「…………。」

着古して少し色落ちしたいつもの下着に代わって脱衣所に行儀よく置かれていたのは全く見覚えのないピンクのスケスケランジェリーなのであった。
そして現在に至るわけである。
セクシーランジェリーを前に素っ裸で愕然とする私は傍から見れば相当滑稽なことだろう。私が入浴している隙を狙ってこっそり取り換えられたと考えてよいのだろうけど一体誰が…なんて愚問中の愚問か。だってこんなことをする人物なんてこの船に一人しかいない。

「あの野郎…今日という今日は許さないんだから!」

暢気にプリンだとか言ってる場合ではなくなった私は荒々しくパーカーに袖を通すと沸々と込み上げる怒りに後押しされるがまま事の発端である張本人の部屋へと猛ダッシュで向かった。因みにランジェリーはぶっ千切ってゴミ箱に捨てといた。

****

「ちょっとローさん!開けて下さい!居るのはわかってるんですよ!」

ドンドンと殴りつけるように扉をノックすれば意外にもあっさりと部屋の主は隔たりを開きその姿を現した。

「どこの借金取りだお前は」

澄ました顔して皮肉を言うローさんのなんて憎たらしいこと。その余裕そうな面にグーパンチの一つでもかまして責め立ててやりたかったけれど、こんな珍妙な話、廊下にいる誰かの耳に入りでもしたらお嫁になんて行けたもんじゃない。
一先ず私は入り口を塞ぐローさんの胸をぐいぐいと押して部屋の中へと押し入り、完全に扉を閉めてから漸く本題を切り出す。

「一体何なんですか、あの下着!」

「俺からのささやかなプレゼントだが?」

「プレゼントにしては有難迷惑も甚だしいです!
 ていうか一体どんなルートで入手したんですか」

「聞きたいか?」

「やっぱりいいです!なんか怖いし、いろんな意味で」

「ふ、利口だな。それより…」

え、何だろう。
急にローさんが神妙な面持ちとなり、その只ならぬ雰囲気につられて私も緊張する。

「アレ……身に着けたのか?」

「…………着けるわけないでしょうっ!」

「じゃあ今はノーブr「それ以上喋るな!!」

ハァ…、一瞬でも気を張った私が馬鹿だった。もういいからとにかく下着返してほしい。大体何だってこの人は私の嫌がることばかりするのだろう。ローさんの私に対する嫌がらせが始まったのはいつ頃のことだったっけか…。
ある時、疲れ果てて元気の無い私の元にやって来たローさんが徐にポケットから小さな包み紙を取り出して私に差し出してきたことがあった。それはどこからどう見てもチョコレートであったし、極め付けに「疲れた時は甘いものが効果的だ」なんて言うものだから私はローさんの優しさに感動しつつ何の疑いもなくその一欠けらのチョコレートを受け取ってパクリと一口で頂いたよ。そしたら次の瞬間私の口から火が出た。由々しきことにチョコレートだと思って食べたそれは激辛カレーの固形ルーだったのだ。
またある時、いつも抱いて寝ていたベポそっくりテディベアをいきなりひったくられたことがあった。なんでも「このクマは重い病を患っているから今すぐ手術が必要だ」とのことらしい。ぬいぐるみが病気だなんてそんな馬鹿な…と思ったのが率直な気持ちだったけれど、まぁ医者が言うなら間違いではないのだろうと大人しくローさんに託してみた。翌日「手術は無事成功した」とドヤ顔を見せるローさんから手渡されたのはベポそっくりのテディベアから何故かローさんそっくりの人形へと変貌を遂げたぬいぐるみだった。正直すごくショックだった。フワフワの抱き心地がお気に入りだったのに…。

他にも思い返せば手に取るように蘇る嫌がらせの数々。こうして抗議することも度々だけれど一向にやめてくれないし。何でこんな仕打ちばっかり…。もしかして私嫌われてるのかな…。あ…やば、そう思ったら目頭が熱くなってきた…。泣くな、私。泣いたらこの人の思う壺だ。余計面白がられるだけだ。
そう自分に言い聞かすのに我慢しようと思えば思うほど悲しい気持ちが心の中で暴れだして、ついに堪え切れなくなった私の瞳からポロリと一粒の涙が零れ落ちてしまった。

「何も泣くことねェだろう」

「誰のせいだと思ってるんですかっ…。
 そもそも何で意地悪ばっかりするんですか。私のこと嫌いなんですか…」

一粒零れてしまえば後に続けとばかりにとめどなくポロポロと零れ出る涙。そしてローさんの口から零れ出るのは盛大な溜息。
ああ、そうですよね。目の前で泣かれたら面白いどころか迷惑ですよね。
きっと今すぐ出て行くべきなのだろうけど、まるで足は凍りついたように動かず私はただ下を向いて濡れた唇を舐めることしかできないでいた。じんわりと塩辛い味が口の中に広がる。

「ったく、この鈍感」

その時、歪む視界にぼんやりと映していたローさんのコートの裾が揺れた。かと思いきや次の瞬間には顎を持ち上げられ、今までにないほど近くにローさんの顔があって
そして
口の中に広がっていたしょっぱい味が砂糖のように甘く変わって私の唇に残った。
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