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【仗助】LID

仗助くんは優しいね。
でも、あなたのそういうところが、私は嫌い。

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****



「(……重い)」

日直というのは、その一日を学級の手となり足となりて働くことにありけり。

昼休み、昼食後になんとなく甘いものが食べたくなって、コンビニまでアイスを買いに行こうと教室の外に出たのが間違いだった。

職員室前の廊下を過ったところで運悪くも担任に見つかってしまった私は

「丁度良かった、波野。お前、日直だろう?これ、準備室まで運んでおいてくれ」

と、きっちりクラス人数分のアルコールランプが敷き詰められた段ボールを有無も言えないままに押し付けられてしまったのだった。

担任め、どうせ私のこと暇だと思って…。おかげでアイス食べそびれてしまったじゃないか。
第一、うん十個もアルコールランプが詰められているのだ。とても運べないほどではないにしても、か弱い…というのは別にして、女手一つで運ぶには重量オーバーであると思うよ。

しかし、当の先生は不服そうな私を置いてランチへと出かけてしまったのだから今更嘆いたってどうしようもない。
私は、渋々ながら頼りない足取りで準備室へと続く階段に足をかけた。

ところが、

ドンッ―。

「げっ…」

踊り場に差し掛かる手前、突如何かにぶつかった弾みで態勢を崩した私は、階段を踏み外してしまい、身体は重力に従って真っ逆さまに。

投げ出されたアルコールランプが四散に宙を漂う光景を「ああ、これ全部割れちゃうんだろうな」なんて、つい悠長に眺めていたけれど、やがて背中を強く叩きつけられる衝撃に襲われ、反射的に目を瞑った。

「っう…、いった~……く、ない…?」

あれ?私、今、階段から落ちて背中を打った筈なのに、全然平気だ?それに、アルコールランプだってなんともない。
落ちた時にガラスの割れる音が聞こえたと思ったのに…。一体どういうこと?

「フウー…危機一髪。ワリィ、ちと余所見しちまってて」

「あ、」

仗助くん…。

「あーあー、散らかしちまったな。罪滅ぼしと言っちゃあ大袈裟かもしれねーけど、手伝うよ」

床に転がるアルコールランプの中心で呆然と座り込む私に「立てるか?」と仗助くんの大きな手が差し伸べられたけれども、私は咄嗟に俯き、その手に気づかないフリをしてしまった。

「………。」

やっぱり、仗助くんは優しい。

でも、

あなたのそういうところが、私は嫌い。

「い、いいよ。私もよく前見てなかったし…。お互い様ということで…」

そうして彼の親切を素気なく拒んだ私は、アルコールランプを急いで拾い集めて立ち上がると、足早にその場を去った。



 ****



まるで、鉛を飲み込んだみたいに胸が重くて息苦しい。
昼休みの出来事から幾分か経ち、今はもう放課後だというのに、私の胸に重く沈んだ鉛は未だ顕在していた。

そんなやるせなさを紛らわすように、黒板消しを白い文字に這わせて力強くこするけれど、気鬱の元凶である当の本人は、窓辺に背を向け何食わぬ顔で雑誌を読み耽っている。

昼間の喧騒を忘れたような静寂は、この空間に二人きりであることをより強調しているみたいで、少し気を抜くと手が震えてしまいそうになる。

「(家で読めばいいのに…)」

心中で悪態を吐きながら横目に映る姿を睨んだけれど、雑誌に夢中の彼はまるで私の視線に気付く素振りもない。

そりゃあそうでしょうね、私のことなんて眼中にないんだもの。
きっと、こんな風に存在を意識したり、緊張しているのも、私だけなんだろう。

「(本当…私って可愛くない女…)」

自己嫌悪するくらいなら、もっと素直になればいいのに。

ズシリ、と胸の鉛が更に重さを増したような気がした。



その時、ふいに背後から長い腕が伸びてきたかと思えば、さらりと私の手から黒板消しが奪われた。

「上の方、届いてねーじゃん」

「…………。」

鼻先をくすぐる爽やかなコロンの匂いや、耳元で聞こえる衣擦れの音。
五感で彼がすぐ後ろにいるんだと感じた。

バカね、不覚にもときめいてしまうなんて。
でも、あなたのその思わせぶりな優しさが、私を自惚れ屋にするから、だから嫌いなのよ。

「どーも…」

私に代わって黒板を消してくれる仗助くんの手から視線を逸らし、私はまた昼休みの時のように顔を俯かせて彼と黒板の間から抜け出そうとした。

けれど、すかさず体を挟み込むように彼の両手が付かれ、阻まれた私は

「あの、動けない…です」

蚊の鳴くような声でか細く訴えることしかできずにいた。

そもそも、何のつもりで私を捕らえているのか分からない。
さっきまで此方なんて見向きもしなかったくせに、今はブルーの双眼は真っ直ぐに私を捉えている。

「なあ、朱亜よォ~…何でそんなに俺のこと避けるワケ?」

「何でって、そんなの…」

あなたに振られたからじゃない。

あれは、いつのことだったろう。
思い切って想いを打ち明けたあの日、彼が私に告げた返答は「今はまだ付き合えない」。
その言葉の意味が私には理解できなくて、だけど、いくら訊ねても仗助くんは誤魔化すだけで…。

だから、必死で自分の気持ちに蓋をしようとしたのに、それなのに何で私に優しくするの?こんなことされたら、期待しちゃうじゃない。
朱亜…悪ィ…泣かせるつもりはなかったんだけどよ」

気付けば、今まで心の奥に抑え込んできた想いが溢れ出していた。
今更こんなこと言ったって仕方ないことも頭の隅では理解していたのに、それでも暴走する気持ちに歯止めが効かなくて、高ぶる感情をぶつけてしまった。



「…………もう、私に優しくしないで」

「…………。」

酷い言い方をしたと思う。
仗助くんは黙り込んでしまって、怒らせてしまったのか、悲しませてしまったのか、一体どんな表情で私を見下ろしているんだろうと気になったけれど、伺い見れずに顔を背けてしまう。

どうしてこんなことに…。
望んでいたものとは真逆の結末に、もう居た堪れないと私は遮る腕から逃れようと身を捩ったけれど、

「わかった…もう優しくしねェ」

その言葉とともに降ってきた噛みつくようなキスに、私の思考は一瞬にして攫われてしまった。

「な、ちょ…っと、待って…!」

戸惑う私にお構いなしに何度も激しく口付けを交わされ、漸く解放されかたと思えば今度は首筋に噛みつかれた。

「アンタから言い出したんだゼ?
 今更やっぱりナシなんて、いくら優しい仗助くんでももう止められねーよ」

「じょ、冗談やめてよ、こんな時に」

「冗談じゃないって言ったら?」

「それは…」

もっと問題よ!
だって…またあなたへと気持ちが走ってしまうのを今度こそ止められなくなってしまう。

だけど、触れた指先や唇から迸る熱に翻弄され、今まで必死に抗ってきたというのに、ああ…私は結局またこの人に墜ちてしまうんだ。



*****

本当は巻き込みたくねーから、吉良のことが落ち着くまで距離を取ろうと思ってたが
…何があっても俺が守ってみせますよ。
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