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【花京院】猫に青春 6

陽が傾きオレンジ色に染まる教室は、どこか風情漂うものであると思ったのは最初の一日だけで、今となっては所詮、面白味の欠けるただの箱庭となんら変わりない。
などと、本日も問題集に向き合う承太郎は見慣れた光景に飽き飽きとしていた。
しかし、そんな環境に身を置く中でも、明らかに異なる事項が一つ。それは、隣の席に腰を据える男の様子が近頃おかしいということだ。何がおかしいかというと、補講を受けているにも関わらず、問題集には一切手をつけずに終始窓の外をボンヤリ眺めているわ、

「おい、花京院…おい!」

と呼びかけても反応はないわ。兎に角、心ここにあらずといった感じなのである。

拍手[2回]

「え?承太郎何か言ったかい?」

そう言って花京院が虚ろに振り向いたのは3度目の「おい」の後であった。

「てめぇ、"何か言ったか?"じゃあねぇぜ。
 いつまで黄昏ていやがる。さっさと問題に向き合いやがれ」

もっとも、学校で寝泊まりしたいというなら別だがな、と付け加える承太郎であったが、返って来た返答は彼の予想を遥かに上回るものであった。

「問題に向き合え、か…確かに僕は自分の前に立ち塞がる根本的問題から目を背けてきた。
 その結果、彼女をあんなにも傷つけてしまうことになるなんて…」

はぁ…、と今度は頭を抱えて自己嫌悪に浸り出す隣の男。その怪奇な光景に片眉を跳ね上げた承太郎は「一体何の話だ」と問おうとしたが、流石、洞察力に長けているというべきか、瞬時にそれは愚問であるという判断に至り、質問を変えることにした。

朱亜がどうかしたのか」

「な!?なんてことだ承太郎!君のスタンドは人の心までも読めるのかっ!?」

「(やれやれだぜ…)」

呆れられても仕方ないほどの動揺っぷりを発揮する花京院に之がかのDIO討伐に大きく貢献した人物であるのかと思うと情けない限りだが、それほどまでに恋は人を変えてしまうらしい。

そうして花京院は暫く躊躇の様子を見せていたものの、やがて思い余った彼は徐に口を開くのであった。

「実は…僕には子供の頃からずっと今でも抱えている悩みがあるんだ。
 それは他でもない、スタンド能力のことなんだけど…。
 僕はずっと、スタンドが見えない人間とは互いに理解し得ない存在なんだと思っていた。
 いや、実際にそうだった。だから、これまで敢えて孤独を貫き他人を敬遠してきた。
 

 けれど、彼女に…朱亜に出会って僕の概念は大きく変えられたんだ。
 彼女はスタンド使いじゃないけれど、一緒に居るとなんていうか、
 すごく愉しくて心地よくて…ずっと彼女の側に居たいと心からそう思う。

 だけど…彼女を強く求める度に僕の中の不安もまた大きくなっていくんだ。
 やっぱり、スタンドが見えない人間とは分かりあえないんじゃあないか、
 彼女が僕の全てを知ったら、軽蔑の目で見られるんじゃあないか、
 そう考えると、どうしても決定的な一歩が踏み出せない…。

 しかし、その中途半端な態度が、彼女の心を深く傷つける結果となってしまった…。
 あの時の朱亜の悲愴に歪む顔…今思い出しても胸が張り裂けそうだ…。
 あんな顔をさせてしまった以上、僕はもう彼女に近づく資格なんてない…」

そうして項垂れる姿からはまるで生気が感じられない。それほど彼の精神は衰弱しきっていた。聞くところによると、もう朱亜とは三日も口を利いてなければ目も合わせてもらえないとのこと。石橋を叩きすぎたか、結局のところ彼は頭を抱える羽目となったのだから、なんとも哀れである。

「そりゃ気の毒にな」

意気消沈とする彼に対し、そう一言で締め括ってしまえばそれまでだが、しかし、承太郎は帽子を被り直しつつ尚も続けるのであった。

「お前の言うとおり、これ以上中途半端にアイツと関わるくらいなら止めておけ。
 互いに傷を深めるだけだ。
 ただ、それで本当にてめぇが後悔しねぇと言い切れるならな」

「後悔…」

「自分の胸に手を当てて、もう一度よく考えてみるこったな。だが……」

"あんまりモタモタしてると、他の野郎に取られちまうかもしれねぇがな"

その言葉に「え、」と顔を上げた花京院の瞳に映ったのは、どこか意味を含んだように口角を上げる友の姿であった。 

****

相変わらず薄幸な花京院…^^;
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