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【花京院】猫に青春 4

「もう朱亜ったら、どうして言ってくれなかったの?」

「え、何が?」

「またまた、とぼけちゃってぇ!花京院くんと付き合ってるんでしょ?
 知ってるんだから、ここんとこ毎日中庭でお昼を一緒にしているの」

語尾にハートマークを付けんばかりに言いながらニヤニヤ笑みを浮かべる親友は流石、色恋沙汰に目がないだけある。
しかし、彼女の期待に沿えるようなエピソードは生憎持ち合わせていない。

「別に付き合ってなんかないよ」

「えー、あんなに仲良いのに?」

「確かに仲はいいけれど……でも、彼とは恋人同士じゃないわよ」

恋人同士じゃないけれど…

「(そういえば、あの人にとって私って一体何なんだろう……)」

拍手[3回]

****

眼の検診の都合で学校には午後から向かうことになるので、残念ですがお昼はご一緒できません。
花京院がそう朱亜にそう伝えたのは昨日のことであった。

彼と過ごす昼休みが完全に習慣付いた今日、久々に一人で食べるお弁当は少し味気ないな、と朱亜はいつもの場所で卵焼きを頬張りながら感じていた。

「あの人がいないと、なんだか物足りないね」

一足先に食事を終え、彼女の膝の上で日向ぼっこをするジジも、どこか寂しそうである。

それから暫く弁当をつついていた朱亜だったが、やがて箸の動きを止めると、ハァ……、と深い溜息を一つ。
なんだか今日は食事が喉を通らない。
そうさせるのは、きっと胸に引っかかっている蟠りが原因であろう。

結局、朱亜はまだ半分ほど残っている中身をそのままに弁当箱を仕舞うと、唯々、相棒の触り心地の良い背中に手を滑らせ、徒に時間を過ごすのであった。

****

「そろそろ行かなきゃ、授業に遅れちゃう」

腕時計の針が午後の授業開始の時刻に差し迫り、名残惜しそうに尻尾を下げるジジに別れを告げた朱亜は教室へと足を向けたが、その時、

「あなたのことがずっと好きでした!よかったら、私とお付き合いして戴けないでしょうか…」

「(う…!?)」

丁度校舎の角を曲がった先であらぬ現場に遭遇してしまうのだった。
咄嗟に校舎の陰に隠れる朱亜は、いけないと分かりながらも

「(やっぱり気になっちゃうのよねー…)」

それが人の性というやつか、つい傍耳立ててしまう。
しかし、次の瞬間、朱亜は自分のその浅ましい行為を後悔することとなるのであった。

「すいません、お気持ちは嬉しいのですが…今は誰とも交際をする気はありませんので」

その声に朱亜は聞き覚えがあった。いや、それどころか、その声の主をよく知っていた。

「(花京院くん…)」

頭ではまるで時が止まったかのような錯覚を覚えるのにドクン、ドクンと鼓動は加速して忙しなく全身に血を巡らす。

"誰とも交際する気はない"

彼が放った言葉は、朱亜の心にかかっていた靄を更に濃いものとするのに相異ならなかった。

「(やっぱり、花京院くんは私のことなんて何とも思ってないのかな…。
 でも、だったらあの時のキスは一体…)」

無意識に唇を指でなぞり疑心暗鬼に駆られる朱亜だが、ふいに足元から上った「ニャー」という鳴き声にハッと我に返る。

「ちょ、ジジ!静かにっ」

と言ったところで、今一番声を大にしているのは自分だ。

この期に及んでおっちょこちょいが裏目に出たか、しまった!と思った時には、女生徒はその場から走り去ってしまったのであった。

やってしまった…と今度は罪悪感に苛まれ、まったく今日は感情の流動が激しい日である。
頭を抱えてしゃがみ込み、慰めているのか知らないが何やら肉球をポンポンと押し付けてくるジジの奇怪な厚意を受けながら、朱亜は今日一番の深い溜息を吐いたが、その刹那、

「そんな所に屈み込んで何をしてるんですか」

と、頭上から降ってきた声にビクッと体を強張らせるのだった。

「か、花京院くん!も…もう学校に来てたんだね!
 えっとー…その…ちょっと立ち眩みがして…わ、私も病院行った方がいいかなー…なんて」

「え、大丈夫ですか?」

そう言い、手を差し伸べようとする花京院だが

「い、いい!」

朱亜は勢い余って咄嗟にその手を撥ね退けてしまうのであった。

朱亜…?」

「あ…ごめん…その、もう大丈夫だから…私……先に教室戻るね!」

優しくされるとまた惹かれてしまう。触れてしまえばドキドキしてしまう。
けれど、思いあがっていたのは自分だけなんだ。

そうして逃げるように彼の前を後にした朱亜は、息を弾ませながらも目頭が熱くなってゆくのを感じていた。
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