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【ルッチ】死んだフリはある程度有効

給料良し、社長良し、おまけにこーんな広いプールまで入り放題だなんて、

「いや~、ガレーラカンパニーって最高!」

なんて正直な感想を述べたら至極眉根を寄せて此方を睨むルッチと絶賛したばかりであるプールの水面越しに目が合った。その視線がなんだか気に食わなくて、縁に立っていた私は右足の先端で月明かりの溶ける水鏡を思い切り蹴ってやった。

拍手[1回]


『クルッポー…お前、本来の目的を忘れたわけではあるまいな?』

「勿論。
 でも、少しぐらい羽を伸ばしたっていいじゃない。
 あーあ、エニエス・ロビーにもこれぐらい立派なプールできないかなー」

『安易な言動は慎めバカヤロウ。
 誰かに聞かれでもしたらどうする』

ルッチはそう言っているけど、アイスバーグさんは出張で留守にしているし、加えて今は夜中だ。

「こんな時間にプールにやってくる物好きなんて私たち以外にいないと思うよ」

シュア…そんなに俺と二人きりになりたかったとは…』

「何ほんのり頬赤らめてるの!?
 別にどうこうしようとか思ってないからね!?」

そもそも、私は貴方のことを誘ってなどいません。というのも悲しきかな、悪魔の実を食べた彼に一緒にプールで泳ぎましょうなどと言ったところでそれは通りもしない提案だということは自明だからである。にも関わらず、この男は自分の意思でこうして私のストレス発散に付き合っているのだから意外だ。
ただ眺めていても退屈だろうに。一人で遊泳を楽しんでいる最中、プールサイドに佇むルッチに向けてそう投げかけると「俺の勝手だ」なんて無愛想な返事が返ってきたのは先刻の話。相変わらず気に障る態度だ。そうこうしつつも結局彼が飽きるよりも先に私が泳ぎ疲れて今に至るわけであるが。

「向こうに帰ったら長官にプールつくってもらえるようお願いしようっと」

話を冒頭に戻してプール建設計画に思考を巡らせるとルッチはまた渋い顔を作ってみせた。

『あるだけ邪魔だ。
 そんなに泳ぎたければ滝登りでもしていろ、ポッポー』

「ルッチって本当いちいち癇に障るよね。だからいつまで経っても友達少ないんだ。
 ま、豪華なプールを作ったところで泳げないんじゃ、嫌味も言いたくなるわよね~。
 能力者ってかわいそ~」

「ふん…プールの楽しみ方はなにも泳ぐだけとは限らない」

「うきゃっ!?」

私が突拍子もない悲鳴を上げたのは急に低くなった声と吐息を耳に感じたから、だけではなく後ろから伸びてきた手が腰に回されたからでもあった。

「ちょ、セクハラ!誰かに見られたら…」

「こんな時間にプールにやって来る物好きなど俺たち以外にいないのだろう?」

そうやって不敵に笑うルッチのなんて憎たらしいこと。だってそれは先刻私が言った科白じゃないか。なんとか対抗しようと必死に言い返す言葉を頭の中で探るけれど、纏め上げた髪から覗く濡れた首筋にルッチの唇が吸いつき、腰に回された手は、ビキニを纏う露出した体幹をくびれに沿ってゆっくりと撫であげるものだから、そんな愛撫に私の意識は侵され情けないことに何も考えられないのだ。挙句、皮肉の代わりに私の口から漏れたのは小さな歎声ときたのだからもう自分が恥ずかしいったらない。ただ触れられているだけなのに感じてしまうなんて私って実はハレンチだったんだうわぁ…。しかし、ショックを受ける此方の心情などお構いなしに、ルッチの手がとうとう胸の膨らみを捉えてしまったわけですが、もうこれセクハラの中でも重罪にあたる方ではないだろうか。

「それ以上触ったら人差し指で心臓に穴あけるわよ!」

「そう恥ずかしがるな。お前が俺にほの字だということは既に把握済みだ」

「ほの字ってその言い方すごく世代を感じる!
 ていうか私別にルッチのこと好きじゃないよ!
 ていうかそんなことを恥ずかしがっているわけじゃないというかなんていうか
 とにかく離れろ今すぐに…って、ギィァーーー!なに紐取ろうとしてるの!?!?」

や め ろ ! 

ドンッ―――

と咄嗟にルッチを突き放したのは、ごく反射的な行動であって決して悪気はなかった。ましてや殺意なんて…。しかし、私に押されたその身は水面の上に投げ出され

「「あ、」」

と思った次の瞬間には
バッシャ―――ン!と勢いよく水を跳ね上げ彼は水中へと召されたのであった。

「ル、ルッチーーーー!?」

すぐさまルッチが落ちたプールを覗き込み彼の名を呼ぶもブクブクと気泡が水面に返るだけで応答はない。

「どうしよう…突き落しちゃった…」

ああ…長官、私はとんでもない罪を犯してしまいました。今まで多くの悪を捌いてきたけれども、事もあろうに何の罪もない仲間を溺死に追いやるなんて…。きっと私は殺人者として後の一生をインぺルダウンの監獄の中で過ごすのね…。
…いや待てよ、これは正当防衛だ。悪いのは…そう、ルッチ!私にあんなセクハラするから罰が当たったのよ!だから助ける義理だってないもん!寧ろあんな奴いない方が清々するに決まっている。ルッチが落ちた場所をくるくる旋回して周章狼狽するハットリには可哀想だけれど、君の主人はもう帰らざる人なのよ…。

「アーメン」

そうして自己完結に至った私は慈悲の一言を残してその場を去ろうと踵を返したけれど…足が前に動かない。

「…………ハァ、本当に死んだら寝覚めが悪いったらありゃしない」

どうやら自分の良心は自分が思うよりも幾らか誠実なようだ。
私は水着の緩んだ紐を締め直すと一筋の月明かりだけを頼りに暗闇の水中へと飛び込んだ。

****

能力者というのはまったくもって不便なものね。豪華なプールがあっても泳げないし、何より一度水に落ちれば命取りになり兼ねない。そうなれば助ける人だって大変なのよ?大の大人一人抱えて泳ぐのがどれだけ疲れることか。
そんな思いでやっとこさルッチをプールから引き揚げた時には私の息は絶え絶え。ったく、世話の焼ける大猫だこと。けれども、水縁に横たわらせた彼の顔に張り付いている黒髪を指で退けた際、呼吸を整えようと懸命に酸素を取り入れていた私の胸がドクリと厭な音を脈打った。
ルッチ…息、してない…?

「ルッチ?おーい…」

呼びかけても反応はなく、頬を叩いてもペチペチと空しく音がなるだけでその目が開くことはない。
うそ…もしかして本当に…

「やだ…ルッチ、ルッチ!」

すぐさま反転し、ルッチの胸の上に手を重ね胸部を圧迫するも体が震えて上手くできない。それでも貴方を失いたくない一心で前髪から滴る塩水が目に入っても構っていられないほどに必死で名前を叫びながら懸命に胸を押し続けた。

 貴方が目を覚まさなければ私はこの先、一生後悔してしまう。
貴方をすぐに助けなかったこと、貴方に何一つ本当の気持ちを伝えていないこと。

「お願い…目を開けて…」 

縋るような思いに懸けて息を吹き込もうとルッチの唇に自分の唇を重ねた。ところが

「……?ん……んん!?んーーーーーーー!!ん゛~~~~~~~~!!」

妙な違和感を感じたのは直ぐのこと。
突如、自身の後頭部に何者かの手が添えられた感触を不思議に思い唇を離そうとするも、そんな意志に反して添えられた手は力強く私の頭を押さえこみ、それを阻むのであった。極め付けにヌルリとした生温かい舌が私の口内を侵しにかかったとくればもうはっきりと断言できる。

「ルッチこの野郎生きてるじゃねーかっ!」

散々口づけを交わした後に漸く解放された口から罵声が衝いて出るのも当然だろう。しかし、当の本人は先ほど打っていた小芝居とは一変、それはもうムカつく程にピンピンして余裕の表情。

「当たり前だ。此れしきで命を落とすほど俺は軟じゃない」

水も滴る良い男気取りだか何だか知らないけれど髪なんかかき上げちゃって。ったく、人の気も知らないで…。

「馬鹿ルッチ…」

本当は頭突きの一つでもお見舞いしてやりたかったけれど生憎今はそれを実行に移す気分ではない。私はルッチの胸板を軽く殴るだけに留めてその胸に力無く額を預けた。

シュア…泣いてるのか」

「塩素が目に入って痛いだけだもん」

「心配したと素直に言ったらどうだ」

「ふん、アンタなんか死んじまえ。…………でも、ちょっとホッとした」

耳を澄まさないと聞こえない声でそう囁く私を忽ち包んみ込んだルッチの腕が、濡れているのになんだかあったかくて、ずっと続いていた手の震えが漸く止まった。
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