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【ルッチ】ルッチって髪型にすごく気使ってそうだよねっていう

「おやぁ?」

シュアが不思議に思ったわけは、司法の塔を後にした筈の彼が再び扉を開いて此処へと戻って来るのに数分とかからなかったからであった。

「出掛けたんじゃなかったの?」

「気が変わった…」

すれ違いざまにポツリと言い零しながら自室に向けてホールの階段に足をかける人物はどこか不機嫌を催していた。
そして、そんな彼のご機嫌斜めの理由もまた、彼が出掛けてから再度塔へと戻って来ることと同じように、シュアが理解するのにそう時間はかからなかった。

拍手[5回]

「まぁ…今日定休日だしねぇ~、美容院」

きっと無駄足を踏んだことで機嫌を損なったのだろう、という読みはどうやら的中したらしい。
独り言のように呟いたシュアの科白が耳に入るや否や、それまでコツコツと響いていた靴音がピタリと止んだ。

「知っていたなら出かける前に言え、バカヤロウ」

「あのねぇ、暇だから相手してくれって言ったのに、
 "俺はお前と違って忙しいんだ、一人で遊びに行けシッシッ"
 なんて邪険扱いしてさっさと出て行ったのはどこの誰よ」

こちとら一人で出かけて楽しめるほど豪遊できるお金なんて持ち合わせていないっていうのに…と言いかけたところで、シュアの脳裏にある考えが閃いた。

「ねえ、私が切ってあげようか?」

「まさかとは思うが…俺の髪をか…?」

「ちょっと何よ、その不信な目は。
 大丈夫だって、過去に美容師に扮して潜入捜査したことがあるから
 こう見えて腕には自信あるの!それに…」

価格も良心的よ、とセールスマンさながら売り文句を述べながら愛嬌良く笑顔をつくるシュアの真の目的は正に之であり、彼女はルッチからお小遣いをせしめようとの魂胆であった。

****

そんなこんなで半ば強引にルッチの手を引き、自室のドレッサーの前へと座らせるまでに至ったのだが、「あった、あった」と、クローゼットの奥からシザーケースを引っ張り出すやる気満々のシュアとは対照的に、ルッチは依然不安が拭えないようで鋭い眼光を鏡越しに送る。

「一応断っておくが、図画工作のように画用紙をハサミで切るのとはわけが違うんだぞ。
 本当に大丈夫なんだろうな?」

「心配には及ばないって」

ルッチの険しい表情など意に介さず、着々と散髪準備に取り掛かる彼女にこれ以上の抵抗は無駄か。これまたシザーケースと仲良くクローゼットの奥で長年眠っていたであろうクロスを掛けられたルッチは諦めてこの流れに身を任せるしかないことを悟った。

「さて、お客さま、今日はどのような感じに致しましょう?」

「…全体的にバランスを整えるぐらいでいい」

「ええ~それだけ?もっとこうして欲しいとかないの?」

「ああ、ある。
 まず、任務での失敗を俺になすりつけるのをやめて欲しい。
 それから食事の時に嫌いな食べ物を俺の皿に移し乗せてくるのもやめろ。
 あと、もう少し色気のある下着を着用したらどうだ。流石にくまさんはないだろう」

「そういう要望を言えって意味じゃない!
 ていうか、一体いつ私のパンツ見たのよ!変態か!」

「人の部屋に押し入っては散々ハットリと戯れた揚句、
 豪快にいびきなんぞかいて寝てるからだ。無防備にも程があるぞバカヤロウ」

「うっ…。こ、今度パンツ見たらタダじゃおかないんだから!
 逆にあんたの寝込み時にこのワカメ髪にストレートパーマあてるわよ?」
 

「ふん、俺はストレートも似合う。ソースは13歳の俺。
 そんなことより、俺は何も世間話をするためにここに座っているわけではないぞ。
 やるならさっさと始めろ。」

「あ、そうでした」

ルッチの一言に、今は口よりも手を動かすことに集中すべきであることを思い出したシュアは、気を取り直して漸く目の前の黒髪にハサミを入れた。

****

それからどれぐらい経っただろう。
最初こそ見張るようにハサミの動向を目で追っていたルッチであったが、なかなか手際の良いシュアに、どうやら腕に自信があるというのは嘘ではなかったらしいと安心したのか、チョキチョキというハサミの軽快な音を聞いているうちに、つい、うとうとしてしまっていた。

そうしてハッと目が覚めた時には既に散髪は終わっていたらしく、シュアの姿は無かった…と思いきや、ベッドの上でまたもや懲りずに寝息を立てる姿が。

「まったく、無防備にも程があると言ったそばから…」

呆れて溜息を吐きつつ視線を前方に戻すと、ふいに鏡に映る自分と目が合う。

「…………。」

なかなか悪くない。そう素直に思うほどの仕上がりであるのは確かだ。
それでも、ただ一つ言うならば…

「何だこの頭に付いているふざけたリボンは」

まったく、眠っているのをいい事に好き勝手やってくれる。いや、本当にストレートパーマをあてられなかっただけまだマシか。
さりとて、こんなものを付けて外を出歩こうものなら世間の笑い物である。何より、どこぞの野良犬にからかわれるなど己のプライドが許さない。
当然、頭の頂に飾られたそれを解くことに一切の迷いなどなかったが、しかし、傍らで羽を休める相棒の首にも同じく結われた赤いリボンを見つけたとくれば話は別だ。

「フ…お揃いだな、ハットリ」

自分に粧されたものより幾分もサイズの小さなリボンを人差指でちょん、と揺らすと『クルッポー』と嬉しそうな呼応が返ってくる。どうやらよっぽど気に入ったらしい。
そんなご機嫌模様の彼を前にすれば、「まぁ、こんなペアスタイルも悪くないか」なんて奇しくも思えてしまうわけで、ルッチはもう一度鏡に映り込む自分と相棒の姿を見遣ると、ほんの少しだけ顰め面を緩めた。

しかし、それも束の間、「さて…」と徐に腰を上げたルッチはベッドへ歩み寄ると、未だ夢の真っ只中であるシュアの枕元に手を付く。

「忠告をしたにも関わらず、それを聞き入れなかったお前が悪い」

などと断りを入れたところで聞こえていないのならば意味はないだろうが、ルッチは構わずギシリとスプリングが音を立てても気付かずクークー寝息を漏らすシュアの唇に自分のものを重ねた。

「ん…ルッチ…?」

暫しの沈黙を置いて漸く彼女が薄く目を開いたのは、唇を離すのにつられてスプリングが二度目の音を立てた時であった。

「やっとお目覚めか」

「あれ…今、何かした…?」

「いいや、何も?」

「そう…?ふふ…」

「…?何を笑っている?」

「似合ってないんだもん、頭のそれ。ハットリは似合ってるけど」

「勝手にプレゼントしておいて散々な言い草だな。
 代金を支払って欲しくないのか?」

「え!本当にくれるの!?」

「ああ、払ってやるさ、カラダでな」

「やっぱりいいです!」
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