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【パウリー】わがままジュリエット

「パウリー達だけズルイ!
 私もアイスバーグさんの護衛したい!
 ねー、聞いてる?ねー、ねー」

「だーー!うるせェ!
 駄目だって何度言ったら分かるんだお前は!
 いい加減しつこいぞ!」

ごねる私に構わず本社へと続く道をズンズン突き進むパウリー。
その横顔から垣間見える表情は苛立ちと呆れが入り混じるものであった。

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ただでさえ人相が悪いというのに不機嫌を全面に押し出すとそれが助長されて余計に恐い。
が、私だって負けじと食い下がる。
だって、尊敬する上司の身に危険が迫っている時は身を呈してでも守ろうとするのが仮にも部下として当前のことでしょ?

「どうして私は皆と一緒に闘っちゃ駄目なの?」

「危険すぎるからに決まってるだろ!
 これはそこいらの海賊との戦闘とはわけが違うんだぞ?」

「そんなの分かってるわよ!
 だけど私だって何か力になりたいんだもん!
 それとも私ってそんなに頼りない?
 そりゃ、私は会社で一番の年少だけどさ。
 だからって子供扱いしないでよ」

それまで足早に進むパウリーに遅れをとらぬよう、彼の少し後ろを小走りで追いかけていた私だったが、ふいに足を止めて脹れてみせる。
置いて行かれるかも…なんて強風でジャケットをはためかせて尚も進み続ける後姿に不安が過ったけれど、私の2、3歩先を行った後に幸いにもその背はくるりと反転し、そして佇む私との距離を再度詰めたかと思えば、彼の両手は私の脹れた頬をやや乱暴に挟み込んだのだった。
口から空気が漏れる緊張感のない音がなんだか場違いすぎて少し可笑しく思えたけれど、私の目と鼻の先にある気難しそうな顔を見れば笑うに笑えず、私は緩みかけた口許を結び直した。

「あのなぁ、俺は別にお前を子供扱いしてるわけじゃねェ。
 ただ、本当にお前のことが心配なだけだ」

「…………。」

「…まだ納得できねェって言うような顔だな」

「…………。」

「ハァ…じゃあこの際ハッキリ言ってやる。
 …………いかねぇだろ……」

「…………?」

「好きな女を危険な目に合わせるわけにはいかねぇだろ!
 …ったく、これで納得できたかよ?」

「…………。」

シュア……、
 何で目瞑ってんだ?」

「え?キスする流れなんじゃないの?」

「ば!?このハレンチが!
 こんなオープンな所でできるわけねェだろ!
 外だぞ!?まだ明るいんだぞ!?」

「大丈夫よ、皆避難して辺りには誰も居ないから。
 寧ろ今がチャンスよ」

「う…それもそうだな…ってヤメロ!
 俺までハレンチの共犯に仕立て上げようとするんじゃねェ!
 だいたいアイスバーグさんの命が懸かってる事態に
 そんな浮ついたことなんてできるかっ」

「えー」

なーんだ、がっかり…と肩を落としたのも束の間、一層強く吹き抜けた悪戯な風が前髪を踊らせたその時、露になった私の額になんと小さな口付けが降ってきた。

「…続きは麦藁たちを捕まえて事が全て片付いてからだ」

すぐにパウリーは素気なく後ろを向いてしまったけれど、耳まで真っ赤に染める姿はさっきまで見せていた恐い顔には似つかなさすぎて空気が抜けた音よりよっぽど可笑しいと思えた半面、そんな彼が可愛くて、私は堪らずその広い背に抱きついた。

「仕方ないなあ。
 これに免じて今日は言うこと聞いてあげる」

「それはキスのことか?
 それともアイスバーグさんの護衛のことか?」

「両方よ」

シュア…悪いな、俺の言い分に付き合わせちまって。
 今度お前が好きな店のドーナツ買ってやるから」

「あんたやっぱり私のこと子供扱いしてるでしょ」

「いでででで!爪を立てるな!冗談だよ冗談!」

「まったく…。
 でも…そうね、ドーナツも捨てがたいけど、
 全てが終わったら私の言い分もきいてくれる?」

「ああ、嫌ってほどキスしてやるから覚悟しとけよ?」

「な!?」

思いも寄らない科白と柄にもなく妖しい笑みを向けるパウリーに不覚にも胸が高鳴り、今度は私が耳を真っ赤に染める番となってしまった。
まったく、人のことをハレンチ呼ばわりしておきながら一番ハレンチなのはどっちなんだか。
だけど、あなたのそんな意外な一面が愛おしい。背中から伝わる温もりが愛おしい。あなたの全てが愛おしい。
自分の体よりも一回り大きな体を抱きしめる腕に力を籠めて、このまま時間が止まればいいのになんて月並みなことを願うけれど、横目に映した落陽は無情にも水平線の彼方へと沈みゆき、やがてタイムリミットを告げた。

シュア、そろそろ行かなきゃならねェ」

その言葉を契機に名残惜しくも腕の力を開放すると、葉巻の独特な香りと共に彼の温もりは風にさらわれるように消えてしまった。


あーあ…
"全てが終わったら"なんて、そんな約束果たされやしないと分かっているんだから否が応でも我儘を押し通せばよかったかしら。
なんて後悔しても、見送り続けた彼の後姿は最早小さく見えるほどに遠ざかってしまったのだからもう遅いけれど。
でも、どうか…

「パウリー!
 言ってなかったけど、
 私もパウリーのこと、大好きだよ!」

どうか、あなたが私を嫌いになっても、ずっとあなたのことを好きでいさせてください。
そんな最後の我儘くらいはきいてくれる?

私の声に振り向いた彼の表情は夕闇に紛れて捉えることはできない。
だから、きっと彼にも見えなかっただろう、
私の頬を伝った一筋の涙に。

「私も行かなきゃ…
 ブルーノが待ってる…」

別つべき二人の運命を恨むつもりはなかった。
気持ちに迷いなどなかった。
けれど、自分が在るべき場所へと進み始めたこの足が非道く重いと感じるのは、吹き荒れる向かい風のせいだけではないだろう。


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