忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【パウリー】愛しのmilky way

「「「誕生日おめでとうパウリー!」」」

「皆ありがとう!」

祝いの言葉を合図に祝杯を交わすと店内は忽ち野郎共の賑やかな声で埋め尽くされた。

拍手[2回]


「パウリー職長、これ俺たちからのプレゼントっす!」

「おうっ、サンキュー!」

「ウオォォォォ!!!パウリー、俺とルルからのプレゼントもあるぞーー!!!」

「叫ばなくても受け取るっての!ありがとよ、ルル、タイルストン!」

瞬く間に大小様々なプレゼントの箱や花束で囲まれた俺は年甲斐もなく心を弾ませた。
1年に1度きりの誕生日は決まって船大工の仲間たちが宴を催して盛大に祝ってくれる。そう、今回だって同じように。
ただ一つ、変わったことと言えば、この当たり前のように繰り返される光景の中に、もうあいつらの姿が無いってことぐらいだ。仏頂面しながらお得意の腹話術で祝いの台詞を口にする鳩野郎も、ふざけたプレゼントを寄越しては俺の反応を見て愉快に笑う角っ鼻の男も、そして………。
ある一人の女の姿が脳裏を霞めたが、俺はすぐさまジョッキを手に取ると酒を一気に体内へ流し込み追想する思考をシャットアウトした。
……もうあいつのことは思いださねェと決めたんだ。

「パウリー…。折角の誕生日だ、今を存分に楽しめ」

静かに俺の肩に手を置くルル。俺はそんなに思い詰めた表情(かお)をしていたのだろうか。それとも、誰よりも人の気を酌むことに長けているコイツだからこそ、俺の纏う雰囲気から心中を察することができたのか…。最早先刻の一気飲みによりアルコールが急激に廻り出した俺の頭ではそんなことを冷静に考えるのもままならなくなってきていた。
案ずるルルに対して「ああ…」とだけ短く返答すると、俺は過ぎた過去を振り払うかのように注がれてきた新たなジョッキに手を伸ばした。

****

「ぐぅ…気持ち悪ィ…」

宴もお開きとなり、なんとか自力で帰宅した俺は灯りも付けずに家に上がると両手いっぱいに抱えていたプレゼントを床に放置するなりベッドに倒れ込んだ。余計なことを思いださねェようにするためとはいえ少々悪ノリが過ぎたか…。しかし、浮かび上がった後悔の念も、容赦なく押し寄せる睡魔によって吸い込まれてしまい、俺は横になってからものの三分も経たない内に深い眠りへと落ちてしまった。

それからどれくらいの時間が経っただろう。随分と経ったような気がするし、ほんの数分しか経っていないような気もした。少なくともカーテンが開けっ放しのこの部屋に太陽の光が差し込んでいないところを見ると街もまだ活気付く時刻ではないのだろう。
普段なら大量にアルコールを摂取した日は太陽が天高く登るまで眠りから覚めない。昔ルルから言われたことがあるが、それはまるで死人のようだとか…。そんな俺が未だ暗闇に包まれる現実に意識を引き戻したきっかけとなったのは、頬に何かが触れる感触を感じたからだった。
違和感に薄っすらと瞳を開けると仰向けになる俺の目の前には何やら人影が。頬から伝う違和感の正体はどうやらその影の主が俺の頬を撫でる感触だったらしい。
一体誰だ…?
覚束ない意識で確認しようとするも寝ぼけ眼でぼやけた視界と暗い室内にかろうじて届く頼りない月明かりだけでは自身の頬に触れる人物をはっきりと捉えることは難しい。
しかし僅かに鼻先を掠める懐かしい香りから連想できる人物、それは

「……シュア……?」

無意識に紡がれたその名を口にするのは酷く久しぶりだった。俺は、彼女を含む政府の諜報部員が会社をめちゃくちゃにしたあの忌々しい事件以来、彼女のことも、関連する話題も一切口にすることを避けてきた。全てを忘れるためだった。アイツとの出会いも、共に過ごした時間も、俺が密かに抱いていた思いも何もかも忘れて無かったことにすれば、身が震える程の怒りや泣きたいぐらいの絶望から解放されるんじゃねェかって思ったから。
でも、実際はそんな簡単なモンじゃねェ。現に事件から一年経った今でも、俺の中からアイツが消えることなど一時たりともなかった。それどころか、あんな酷い仕打ちをされて許せない筈なのに、時間が経てば経つほどシュアへの気持ちは膨れていく一方。
本当は会いたくて仕方なかった。もう一度この手でお前に触れたかった。だけど、くだらねェと自分に言い聞かせて、そんな叶う筈もない願いを押し殺し続けてきた。
そう…こんな願い、叶う筈がねェんだ。
名前を呟いてみたものの冷静に思えばシュアがこんな所にいるわけねェ。きっと俺は都合の良い夢でも見ているのだろう。頭は上手く働かなければ視界はぼやけていて実際のところ自分が今本当に目を開いているのかすらも怪しい。そんな朦朧とした意識では脳が認識している目の前の光景も感じる五感も何一つとしてリアルだという説得力に欠けるんだ。
だけど…
だけど例え儚い夢でもお前に触れたくて、朧気にも俺は未だ頬を滑る彼女の小さな手に自分の手を重ねた。こんならしくねェ大胆なことができるのはアルコールがまだ効いているせいなのか、それとも夢だからなのか。
突然手を重ねられてシュアは驚いているだろうか。彼女の顔を確認したいのに俺の靄がかった視界と意識は意思に反して段々とフェードアウトしていき、やがて深い闇へと溶けてしまった。せめてもの抵抗にと握った手は思うように力が入らなかった。

****

次に目覚めたのは天高く昇った太陽がとっくに島中を照りつけている時刻だった。夏独特の強い日差しが差し込み、蒸すような暑さを伴う部屋には自分以外の姿は存在しない。別に驚きはしなかったし寧ろ、やはり昨夜の出来事は夢だったのだろうと素直に解釈する方が自然だった。
未だ枕に頭を預けボンヤリと天井を見つめつつ昨晩の夢を振り返ってみたが、現実とのギャップに虚しくなるだけで俺はすぐに思考を遮った。
それにしても昨日大量に摂取したアルコールのせいで体はダルイし頭は重いしで体調は最悪だ。

「今日が休みで本当に良かったぜ…」

夕方までもう一眠りしようかとも思ったが何しろ昨日は酒しか飲んでいなかったため俺の体は大層水分を欲している。起きるのは面倒だが渇ききった喉を潤わしたい意思の方が勝り、俺は渋々重い体を起こすと鎮痛剤片手に台所へと向かった。
薬を口に含み飲料水で胃中へと流し込む。冷たい液体が喉を伝い、それまで上手く働いていなかった頭が少しだけ冴えたような気がした。
水の入ったグラス片手にリビングへと戻れば床に無造作に置かれたプレゼントの山が自然と視野に入る。

「いくらなんでもありすぎだっての…」

一つ一つ開けるの大変だな、なんて苦笑を零しながら口に挟んだ葉巻に火を点けようとテーブルの上のライターを手に取ろうとした時、一つだけ山から外れ、ライターの隣に並ぶ赤いリボンの結ばれた小さな箱の存在に気付いた。

「あれ、俺テーブルにプレゼント置いたっけ?しかも一つだけ…」

言いながらそのプレゼントに添えられていたメッセージカードを手に取る。

『Happy Birthday Dear Paulie』

差出人の名も無いカードにはそれだけしか書き綴られていない。しかしそんなたった一行の文章でも俺を混乱させるには充分すぎた。
ドクンドクンと鼓動のリズムが煩く速度を増し、動揺で一気に噴き出た汗が背中を伝う。瞬く間に脳裏に浮かび上がるのは昨日の夢とも現実とも区別がつかない不確かな記憶。

「夢じゃ…なかったのか…?」

俺は気持ちを落ち着かせるように深呼吸を一つすると、徐にプレゼントのリボンを解き掌サイズのその小さな箱を開けてみる。

「やっぱり……」

箱の中に所狭しと敷き詰められていたのはカラフルなコンペイトウ。
何故俺の予想が的中したかは簡単なことだ。俺の誕生日プレゼントにアイツは決まってコンペイトウを用意していたから、ただそれだけ。

『おいシュア、何でお前は毎年コンペイトウなんだよ!
 

 だって私貧乏なんだもーん。これぐらいしか買えない。
 

 お前の給料の使い道は一体何処なんだ…。ギャンブルやってるわけでもあるめェし。
 

 女の子は色々とお金がかかるもんなのよ。それに、コンペイトウってお星さまみたいでしょ?
 誕生日が七夕に近いパウリーにぴったりかと思って!
 

 七夕?なんだそりゃ?
 

 えー!パウリー七夕知らないの!?』

太陽の光に照らされキラキラと輝くコンペイトウに遠い日々が重なる。
何もかも忘れるだなんて決心した癖に、こんなくだらない思い出すら鮮明に覚えている自分を
馬鹿だなァ、なんて笑い飛ばしたいのに何でだ、胸が苦しくて全然笑えねェ…。

「政府の人間の癖して貧乏だなんてよく言ったもんだぜ…ったく」

込み上げる愛しさと愁いを誤魔化すように呟きながらも俺は頬に手を添え、昨夜確かに触れたであろう彼女の心地良い温もりの余韻に浸った。

****

「「「パウリー、誕生日おめでとう!!」」」

「おう、ありがとう!」

あれから月日はめまぐるしく流れ、今年もまた俺の誕生日がやってきた。
1年前の今日、シュアが俺の元にプレゼントを届けに来て以来、彼女は俺の前に現れることもなければ、そんな形跡が残されていることもなかった。
毎年俺にプレゼントをせがんできていたシュアのことだ、もしかしたら貰いに来るかもしれないと密かに彼女の誕生日にプレゼントを用意してみたりもしたが、彼女が現れる他に渡す術も知らず、結局箱の中の存在を誰にも明かされることなくプレゼントは廃棄場へと流れる運命を辿った。
それでも今日もまたアイツが星屑の詰まった箱を手にやって来てくれるんじゃないだろうかと懲りずに心のどこかで期待しちまう俺はやっぱり大馬鹿野郎かもしれねェなァ。
愛しい人に逢える一年にたった一度きりのチャンス。いつの日か教えてもらった古い伝説に
照らし合わせてみたけれど、俺の柄じゃねェか、と可笑しくて笑えた。

「ん?パウリー、何一人で笑ってるんだ?」

「ああ…ちょっと酔ってきたのかもな」

「そんなカクテルで酔うなんてお前らしくないな。
 今日は主役なんだからもっと盛大に飲めばいいのに」

「いいんだよ、今日は…」

酔い潰れるにはもったいねェ。

****

シュア様ならパウリーの家の鍵こじ開けて中に入ることぐらい朝飯前ですよね?
二人がどうなったのかはご想像にお任せしますムフフ←無責任
PR

プロフィール

HN:
新堂モラトリアム
性別:
女性
自己紹介:
当サイトは個人ファンサイトであり原作者様・出版社様・公式関係者様とは一切関係がありません。また著作権侵害を目的としたものではありません。公共PCからの閲覧、オンラインブックマーク、公式サイトとの同窓閲覧、中傷、荒らし、サイト内の文章や画像の無断転載や模倣等はご遠慮ください。閲覧は全て自己責任となりますので苦情は一切受け付けません。マナーを守って楽しめる方のみどうぞ。

NAME CHANGE

ブログ内検索

ご意見があればお気軽にどうぞ