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【ジャブラ】6月5日

「くそ、まだか…一体いつになったら…。やっぱ期待するだけ無駄か…?
 いや、でも万が一ってことも…!しかしそんな奇跡なんて起きる筈が…。
 ああ~落ちつかねェ!」

「落ち着かないのはこっち!私の部屋でぶつぶつ言いながらうろつくのやめてよっ」

私は雑誌から目を離すと先刻から部屋の中を行ったり来たり繰り返すジャブラに一喝した。

シュア、お前って本当に冷てェなあ?少しは俺の心情も察せよ」

心情というのはギャサリンから誕生日プレゼントを貰いたいあまり居ても立ってもいられないという心情ですか?ソワソワするのは勝手だけど自分の部屋でやってよね。まったく気が散るったらありゃしない。
彼がこうして私の部屋に居座るのは想い人であるギャサリンが現在、私の専属給仕であり、仕事上頻繁にこの部屋を訪れるからというところに理由があるのだろうけど。しかし、こういう時に限って彼女はなかなか現れてくれない。


拍手[1回]


「あ、そういえばシュア、お前からもプレゼント貰ってねェ。
 何でルッチにはケーキ作ったのに俺には作ってくれねェんだ!」

「ケーキならルッチのケーキを作っていた時に散々食べたでしょ。しかも殆どジャブラ1人で」

「あの時のことま~だ根に持ってんのかよ!?あれはあれ、これはこれだ狼牙!
 今日は1年に1度の誕生日なんだぞ!?俺はバースデーボーイなんだぞ!?」

いい歳して誕生日の特権を振り翳すとはなんて大人気ないのだろう。

「…じゃあ何が欲しいの?」

「ギャサリンからのプレゼントが欲しい!寧ろギャサリンが欲しい!!」

…………。
渋々ながらもプレゼントを用意してあげようと思ったのが間違いだった。

これ以上ジャブラと話すのも面倒だと見切りをつけ、私は読み掛けだった雑誌に視線を落とした。すると、ある1つの見出しが私の目に留まる。

『どんな相手でも忽ちあなたの虜になってしまう究極の惚れ薬、その名も禁断の恋愛特効薬!』

禁断の恋愛特効薬…?怪し気な響きに興味をそそられた私は食い入るようにその記事を目で追う。

『薬の作り方は至って簡単!
 細かく刻んだ鳩の羽根と粉々に砕いた象の牙を高級煎茶に混ぜるだけ!
 後はこの薬を意中の相手に飲ませるだけで気になるあの子は
 もうあなたにメロメロ間違いなし!』

へぇ~、ちょっと試してみたいかも。……そうだ!
これをジャブラへの誕生日プレゼントにしよう!この薬をジャブラがギャサリンに飲ませればジャブラは念願のギャサリンと結ばれてハッピー、私も感謝されてハッピー、めでたしめでたしじゃん!よしっ、そうと決まれば早速恋愛特効薬とやらをレッツ作るのよ!

「ジャブラ、楽しみに待ってて!」

「おい、どこ行くんだシュア?」

急に勢い付いた私にジャブラは面食らっていたが私は構わず彼を置いて部屋を飛び出したのだった。

****

さて、先ずは薬に必要な材料を集めないとね。
鳩の羽根かあ…。まあ鳩といえば、あの人しかいないでしょ。

「ルッチー!」

バァーンっと勢いよくドアを開け放ちズカズカと部屋に足を踏み入れればソファで寛いでいたルッチが唯でさえ険しい顔をより一層険しくさせて此方を見遣った。

「おい、人の部屋にノックも無しに勝手に入るなバカヤロウ」

「別にいいじゃない私とルッチの仲なんだし」

「どんな仲だ」

「確かに、仕事仲間ってだけで特別な間柄ではないわね」

「別に俺は今からでも特別な間柄になって構わんが?」

「考えただけでもゾッとする!そんなことより、ちょっとお願いがあるんだけどー…」

言いながら私は突然の来訪者に驚いているのか先程から落ち着きなく羽根をバタつかせているハットリに視線を送る。

「ハットリの羽、貰ってもいい?」

『ポ?』

自分の名が出てきたことに小首を傾げて可愛い反応を示すハットリ。それに比べてあなたの主人は侮蔑するかのように私を見下ろしてくるもんだからちょっとムカつく。

「流石バカヤロウの意図することは俺の優れた洞察力でも読めん」

「ジャブラのバラ色ライフのために鳩の羽が必要なの!」

「益々意味がわからん。
 だが、そうだな…、俺の女になるというならば協力してやろう」

急に距離を詰めたルッチは私の腰を引き寄せ顎を持ち上げる。待て、何故そうなる!?ちょっとハットリ、羽根で目を隠してないで助けてよ、この人でなし!(※鳩である)しかし、焦る私を余所にルッチは更に腰を引き寄せる。

「え、ちょ、待った待った!あーっ、顔近づけないでーー!!」

「チャパパーッ!ルッチ、長官から預かった資料を持ってきたぞー!」

あ、フクロウ!ルッチと唇が重なる5秒前ってところで現れるなんて不幸中の幸いね!あなたの登場のお陰でルッチは潔く私から身を離してくれたわ万歳。

「ちっ。フクロウ、お前も人の部屋に入る時はノックをしろ。まったく、どいつもこいつも…」

「チャパパーすまん。邪魔してしまった。でも面白いものが見れたぞ。
 早速フェ○スブックにアップするかチャパパー」

「やめんかい!変な噂が立つでしょうが!」

でも、ルッチがフクロウから受け貰った資料に気を取られている今がチャンス!

「隙ありっ」

『ポッ!?』

私はハットリを引っ掴むとすかさず羽を一枚引き千切り一目散に部屋から退散することに成功した。羽を毟り取られたハットリは痛そうだったけれどさっき助けてくれなかった酬いだ。

****

さて、無事に鳩の羽は手に入ったし、お次は象の牙ね。というわけで私は長官室へと直行した。

「失礼します!」

ルッチの時と同様、勢いよく部屋のドアを開け放つ。

「あっちぃぃぃ!あち、熱っ!!おい、もっと静かに入ってこいよ!
 びっくりして思いっきりコーヒーぶちまけちまったじゃねェか!」

「びっくりしなくても長官はコーヒー溢すじゃないですか」

「うるせェ!それより俺に何の用だ?」

「別に長官に用はありません」

「ええ!?じゃあ何で来たの!?」

「私が用があるのは長官じゃなくてファンクフリード。惚れ薬の製薬に象の牙が必要なんです」

「惚れ薬~?俺の愛象をそんな怪しい用途に使うんじゃねェ。ファンクフリードだって嫌がる」

「そんなことないよね、ファンクフリード?」

『パオ?』

ファンクフリードは私の質問に小首を傾げる。

「今のは断固拒否の反応だ」

「拒否以前に話を理解していない様子でしょ、どう見ても!ああもう、いいから寄越せ!」

長官の不同意を無視してファンクフリードの牙を鷲掴み引き抜こうと試みるが身の危険を感じたのか暴れだすファンクフリード。

「こら、ジタバタするな!あいたっ!」

「止めろ!本当に嫌がってる!」

いてて…長官に手刀をお見舞いされた。

「ファンクフリード、今の内に逃げろ!」

『パオン!』

「あ、待て!こうなったら……嵐・脚!!」

「ギャァァァァァア!!壁がぁぁぁあああ!!」

かろうじて攻撃を避けたファンクフリードだが運良く鎌風が掠めたのか、欠けた牙が床に転がった。

「欠片だけど一応れっきとした象の牙だし、よしとするか♪」

「よしとするか♪じゃねェ!なんてことしやがんだ!
 俺の部屋で六式なんて物騒なもん使うんじゃねェよこのブァカ!
 運良くファンクフリードは無事だったものの壁がえぐいことになっちまったじゃねェか!
 修理費だって馬鹿にならねェんだぞ!?お前の給料から引いとくからな!?」

「そんな…ひっく。給料から天引くなんてあんまりです…ひっく。
 私はただ…ジャブラに喜んで貰おうと思って頑張ってるだけなのに…うぇーん!」

「えっ、ちょ、おい、何も泣くこたァねェだろ!?わ、わかったよ!
 修理費は俺の給料から引いとくから!だからもう泣くなよ…、な?」

「ホント!?さっすが長官!いやぁ、すいませんねぇ!」

「へ?」

先ほどの様子とは一変、満面の笑みを浮かべる私に呆然とする長官。そんな彼に向けて「じゃ、後は宜しく!」と甲斐甲斐しく告げた私は軽快な足取りで部屋を後にした。

「おい、ちょっと待て、シュア!?…だ、騙されたーーー!!!」

****

ふう、なんとか2つの材料は集まった。後は煎茶を用意すればいいのね。確か雑誌には高級煎茶って書いてあったけれど…。はて、高級ってどんなのだ?そうだ、あの人に聞いてみよう!

「カクー!」

シュア、どうしたんじゃ?」

「あのね、高級な煎茶を探し求めてるんだけど、どんなのか知らない?
 あわよくば持ってない?」

「いきなり人の部屋に現われた挙句唐突な質問じゃのう。
 じゃが丁度さっき政府御用達の通販で注文した幻の高級緑茶が届いたんじゃ。
 折角じゃし一緒に飲むか?」

「うん!」

「じゃ、ちょっと待っておれ」

カクはそう言うと手慣れた風にテキパキと持て成しの準備に取り掛かった。
茶葉を入れた急須に湯をさし、蒸らしている間に菓子の用意をする。その流れるような動作につい見入ってしまった。
そうこうしている内に目の前に鼻を擽る上品な香りの煎茶と煎茶の緑にも負けない色鮮やかな茶菓子が差し出された。

「ほれ、召し上がれ」

「わーい、頂きます!」

先ずは例のお茶を一口。

「どうじゃ?」

「おいしい…!
 私、お茶の良し悪しってよく分からないけど、これはすごく良質だって分かる!
 やっぱり爺臭いカクならお茶に詳しいと思って来てみて正解だったよ!」

「爺臭いは余計じゃ。しかし何故いきなり煎茶を?」

「実は惚れ薬を作りたくて」

「ぶっ!?」

「うわっ、いきなりお茶噴出さないでよ汚いなぁ」

「す、すまん。しかし惚れ薬なんて…。お前はいつからオカルト趣向になったんじゃ。
 も、もしかして誰か惚れさせたい奴でもおるのか!?」

「うん、ギャサリンを…」

「ぶっ!?!?」

「ちょ、2回目だけど!お茶が勿体ない」

「よりにもよってギャサリンじゃと!?シュアはそっちの気があったのか!?
 い、いや、それでもわしはお前を愛し続ける覚悟はできておる!」

「カク、落ち着け。なんかとんでもない勘違いをしている」

駄目だ、全然聞いてないわ。頭を抱え込んで何やら一人でウンウン唸り始めたカク。
もういいや…。私は放置を決め込み、お菓子とお茶はちゃっかり頂いてそっと部屋を退散した。

****

「よし、完成ー!」

材料を一通り揃えた私は薬を調合し、遂に惚れ薬の製薬に成功した。というわけで早速ジャブラに届けに行こう!

「ジャブラお待たせーっ」

「遅ェだ狼牙!一体どこ行ってやがったんだ?」

「じゃーん!これを作ってたの。私からの誕生日プレセントよ」

「なんじゃこりゃ?」

「禁断の恋愛特効薬よ!
 これをギャサリンに飲ませればギャサリンは忽ちジャブラにメロリンラブなのだ!」

「なにぃ!?本当か!?」

興奮気味に薬を受け取るジャブラ。しかしすぐに訝し気に眉を顰める。

「でもこれ本当に効くのか?シュア、試しにちょっと飲んでみろよ」

「嫌よ!ジャブラのこと好きになっちゃうじゃない」

「え………!」

「………ん?」

あれ、もしかして私、今結構恥ずかしいことを口にしてしまったのではないだろうか。改めて自分の口走った台詞を思い返した途端、猛スピードで自分の顔に熱が溜まっていくのがわかった。

「い、いや、私は別にあんたのことなんてこれっぽっちも好きじゃないけど、
 でも薬のせいで好きになることもなくはなくて、す、好きになったとしてもそれは別に
 あんたのことが好きとかじゃなくて…ん?何言ってるのかよくわからなくなってきた。
 とにかく赤面するのやめてよっ。こっちまで恥ずかしくなるじゃない!」

もうやだ何この予想外の羞恥プレー。
顔を手で覆い隠すけれど突如力強く肩を掴まれ思わず視界を遮る手を退ければ目の前にはやけに興奮気味なジャブラが。

シュア、俺はアリだ!」

「は?」

シュアに好かれるのも悪くねェ!いや、寧ろイイ!!
 大丈夫だ、お前を受け止める覚悟はできている!だから安心して薬を飲め、シュア!」

えー!何テンション上がっちゃってるの!?ていうかギャサリンに対する気持ち意外と軽いな!
ジャブラって軽いな!

「ほらシュア、薬を飲め」

「や、やだ!」

「自分で飲まねェんなら無理矢理飲ませるぞ!(口移し)」

「いやぁぁあ!」

どうやら私はプレゼントのチョイスを間違えてしまったらしい。この状況をどう切り抜けようかと考える半面、来年は無難にケーキをあげることを固く決意した。
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