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【ジャブラ】不夜島の怪談

~ヨミコさん~

大海賊時代が幕を開けるもっと昔、島の領地を巡って世界の各地では大小さまざまな戦争が勃発していたそんな時代。
ある島にヨミコさんという、村一番の美人で有名な女性がいた。

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ヨミコさんは既婚者であったが、夫は戦争で討死。彼女は夫の墓へと毎日赴き、時間が経つのを忘れて一日中お祈りをしていた。それほど彼女は自らの夫を恋慕い、彼が眠る墓を彼同然のように大切にしていたのだそうだ。
しかし、そんなヨミコさんに悲劇は唐突に訪れた。

「今この時を以って、この島は我々世界政府の管轄とする!」

戦争ばかりの世界の秩序を確立するため立ち上がった政府は、ヨミコさんの住む島を基地の拠点とする考えを示し、それに相俟って機密事項の漏洩を防ぐため島の住民には離島命令を下したのだった。庶民たちは権力の前に平伏すことしか許されず、潔く命令に従う他なかったが唯一、ヨミコさんだけは違った。

「此処には夫が眠る大事な墓があります!どうかこの場所に居させて下さい!」

彼女は命令を拒み、必死に懇願したのだった。しかし

「墓は司令塔建設の邪魔になりうるため撤去する」

「そんな…!あんまりだわ!」

尚も抵抗を続けたヨミコさんは反逆者とみなされ政府の手によって賊害。無念にも彼女の生涯はそこで幕を閉じた。
その後、島は政府の意向により時代に見合った機能へと多々変化を遂げていったが、エニエス・ロビーという名が定着した今でも政府を憎むヨミコさんの怨念は消えることはなく、真夜中、一人でいると人知れずヨミコさんにあの世へと連れて行かれるのだそうd「ぎゃあぁぁ
ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
「落ち着けバカヤロウ」

思いきり後頭部にルッチの手刀をお見舞いされ、私は咄嗟に口を両手で塞ぎ近所迷惑な悲鳴を呑み込んだ。ていうか、危うく衝撃で舌噛みそうだったんですけど。ルッチこの野郎殺す気か!と、いつもならば突っ掛かるところだけど、しかし今の私に限ってはそれどころではない。

「ぎゃはははは!本当シュアは怖がりだな!
 怪談話のし甲斐があるってもんだぜ」

青ざめる私に反して愉快そうに笑うジャブラ。連日続く猛暑に対抗する術無く「暑い暑い」と呪文のように唱えていたところにこの男の「じゃあ涼しくしてやるよ」の一言で怪談大会が始まったわけだけれども、私、お化けとか怪奇現象とかそういう類は苦手なんだって!

「今夜辺りオメェの元に現れるかもなァ?"ヨミコさん"がよォ」

「いやぁぁぁぁ(涙)」

しかし怖がる私を面白がってジャブラは更に恐怖心を煽るものだから私は逃げるようにカリファの影に隠れる。

「ジャブラ、そのぐらいにしてあげたらどう?」

「よよい!こんな物語で~、シュアが恐れないよう~、
 あ、ここはオイラが一つ、更なる恐怖の物語を~語ろうじゃあねぇかぁ~」

「逆効果だ、クマドリ…」

「ワシはシュアの叫び声が一番の恐怖じゃったがのう」

「チャパパー!シュアはきっと今夜一人では眠れないのだ。いい歳してみっともないのだ」

「んな!?バカにしないでよ!
 お化けなんて全然怖くないし。夜だって一人で優雅に大の字になって寝てやるわよ!」

なんて強がってみたものの…

「……眠れない……」

只今時刻は午前二時。不夜島であるが故、射光カーテンの向こうに広がる空は明るいが、街も人も寝静まる時間帯だ。にも関わらずベッドに入った私の目は完全に冴え、まるで眠れる気がしない。それもこれも昼間耳にしたあの話のせいだ。目を瞑って意識を無理矢理夢の中に投じようとするも瞼の裏に浮かぶのは自分の思い描く"ヨミコさん"の姿。思い出したくないのに何で意思に反してそういうこと考えちゃうんだ私のバカ!そんな葛藤を小一時間ほど繰り返し現在に至るわけだが

「こうなったら最終手段を取るしかない…」

とうとう耐えられなくなった私はベッドから起き上がると自分の部屋を飛び出した。向かう先はカリファの部屋。

「少し恥ずかしいけどカリファに頼んで一緒に寝てもらおう…!」

人工的につくられた夜とはいえ、塔内は本当の夜のように暗闇に包まれ、辛うじて通路を照らす蝋燭の頼りない灯りが不気味さをより一層引き立たせている。
見慣れているはずなのにそんな光景にすら心細さを覚えながらも小走りで部屋の前まで辿り着いた私は遠慮がちに扉をノックする。

「カリファ、シュアだけど…」

しかし中からの返事はない。
寝てるのかな…?試しにノブに手を掛けるも鍵がかかっており最早成す術はない。
嫌だなぁ…こんな所で立ち往生なんて…。こうなったら他を当たるしかないわけだが、でもなぁ…昼間あんな大口を叩いたのにやっぱり怖いから一緒に寝て下さいなんて

「今更言えない…」

「何をだ?」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
 ってバカ野郎!いきなり大声出すんじゃねェ!!吃驚するだ狼牙っ」

何の前触れもなく背後から投げかけられた声に、ついにヨミコさんが現れたかと取り乱してしまう私。
ん?でもこの口癖、聞き憶えがある。
恐る恐る振り返ってみると薄暗い空間に佇むのはお化けではなく…

「なんだ、ジャブラかぁ~…」

よく見知った顔に私はホッと胸を大きく撫で下ろすもすぐにポカポカと彼の胸を叩く。

「もうっ、いきなり現れないでよ!心臓止まるかと思ったじゃない!」

「いでででで!俺の部屋すぐそこなんだから別に通るぐらい勝手だろ!
 それよりお前、こんなところで何してたんだ?」

「え」

お化けが怖くて一人で眠れないからカリファに一緒に寝てもらおうと頼みに来たのエヘッ、なんて言えるわけないだろ!絶対笑われる!

「えーと…長官の愚痴でもカリファに聞いてもらおうかと…」

「わざわざこんな夜中に!?
 …お前、そんなに長官に対する鬱憤が溜まってたのかよ、可哀想に…。
 だが、カリファは今晩任務で出掛けてるぞ」

「え!?そうなの!?」

こんな時に任務で留守にするとはなんてバッドタイミング…。くそぅ、本当に長官が憎たらしく思えてきた。任務ならルッチあたりに頼めよな!

「ま、愚痴を吐くのは明日にして今日はとっとと寝ちまえ」

じゃあな、とあっ気なく手を振り去ろうとする背中。しかし私は咄嗟にその後ろ姿に揺れる長い髪を引っ掴む。

「待って!」

「いっ!?コラッ、髪を引っ張んな!」

「置いて行かないで!」

「はぁ!?」

しまった、つい本音が出てしまった!しかし、後悔しても時既に遅し。

「ははーん、お前さては昼間聞いた怖い話のせいで一人で眠れねェんだろ?」

「ちちちち、違うわよ!」

「…ほーぅ。なら、さっさと自室に戻んな」

シッシッと手を払い意地悪く私を追い返そうとするジャブラに「犬のくせに生意気な…」と額に青筋が浮かんだが、しかし背に腹はかえられない。私は恥を忍んで彼に本当のことを打ち明けたのであった。

****

「ぎゃはははは!!あれだけ啖呵切った癖にやっぱり怖いんじゃねェか!」

「うるさい!ジャブラがあんな話するから悪いんじゃない!」

交渉の結果、私の部屋にて一晩を共に過ごしてもらうことになったのだが、そこまで笑うことないじゃん…。もう私のプライドはズタボロだ畜生。
それでも二人分の面積を占めるこのベッドの窮屈さと、すぐ隣に感じる体温がなんだかすごく心地いいのは事実だった。そんな安心感が私を素直にさせるのか、私はジャブラの胸に頭を預け、ぴったりとくっついて甘えた。

「ねぇ、眠れるまで何かお話聞かせて?」

「ったく、しょうがねェなァ」

気が済むまで笑ったジャブラは面倒臭そうにしながらもなんだかんだ私の我儘を聞いてくれるようだ。皆には内緒にしているけれど、普段は意地悪ばかりするのに時々見せる彼のこういう優しいところに実は惹かれていたりする。

「昔から代々伝わる伝説なんだが、
 このエニエス・ロビーには政府に恨みを持つ多くの海賊の怨霊が…いでっ!
 いきなりぶつな!痛ェだ狼牙!」

……前言撤回だ。

「何でこの期に及んで怖い話をするの!ジャブラのバカ!大っ嫌い!
 もういい、ルッチと一緒に寝てもらう」

「待て待て待て!冗談だって、悪かったよ!」

ジャブラに救いを求めた自分が愚かだったと見切りをつけ、ベッドから起き上がるもすぐさま引き留められたため私は渋々、先程と同じようにジャブラの隣に落ち着いた。

「こんな夜更けに化け猫の部屋に行くなんざオメェ、何されることやら…。
 お化けよりも怖い目見るぞ(いろんな意味で)」

「だったらもっとマシな話しなさいよ」

私の抗議にジャブラは「怖がりのくせに偉そうだなぁ…」と、ぶつぶつゴネながらも暫しの間考え込んだ後にゴホン、と咳払いを一つすると徐に語り始めた。

「あるところに、一匹の狼がいました。
 狼は、ある一人の少女にいつもチョッカイをかけたり、悪戯をして困らせたり、
 少女の嫌がることばかりしていました。
 とある夏の暑い日も、意地悪な狼は人一倍怖がりな少女に怖い話を聞かせ
 少女を脅かしてからかいました。
 しかし、狼がそうして少女に意地悪を繰り返すのは少女のことが嫌いだからではありません。
 むしろその逆。狼は少女に恋心を抱いており、意地悪は狼なりの愛情表現だったのです」

………ん?あれ、この物語の狼と少女ってまるで……。
思わず物語を語る声の主に視線を向けるも暗くてその表情をはっきりと捉えることはできない。でも、今頃きっと彼の頬は真っ赤に染まってる。だって、急に上昇してるアンタの心拍数が胸に預けた頭越しに煩いぐらい伝わってくるから。
それが何だか可笑しくも嬉しくて私はバレないように笑ったけれど、きっとそんな私の頬も赤に染まっているのだろう。

「不器用な狼だね。
 でも、その少女もきっとそんな狼のこと嫌いじゃなかったんじゃないかな
 …って私は思うけど」

「それって、つまり…」

「ふふ、まァ、意地悪は程々にしてほしい…と思ってたかもしれないけど」

「う…、すまねェ、これからは素直になる。…シュア…好きだ」

そうして暗闇の中、突如私の唇に降ってきたキスは優しかった。
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