忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【カク】止まないで

雨は嫌いじゃ。
空から見下ろす街の景色も、巨大な噴水の輝きも、
それらを幻想的に魅せる夕焼けの紅も、
全てを灰色の雫で覆って台無しにする。
だから雨は嫌いじゃ。

拍手[1回]

****

「ついてないのぅ…」

帰宅途中での突如降り出した雨に気が滅入る。
降り出すのは夜からだと天気予報は言っておったじゃろう?
もちろん傘なんて持ち合わせてはいない。
次第に雨足が強まる中、わしは濡れた屋根や塀を次々と踏み台に空を駆け帰路を急ぐ。
雨宿りをする気などさらさらなかった。そう、軒下に佇む小さな姿を見かけるまでは。

視界の端に入った光景に足取りを緩めて再度確認してみると

「やっぱり…」

屋根の下で雨を凌いでいるのは良く見知った彼女。
わしはすぐさま方向転換すると一切の迷いもなしに彼女の元へと一直線に向かった。

「いやぁ、参った参った。いきなり降ってくるんじゃもんなぁ」

「カクっ」

突如目の前に舞い降りたわしに目を見開き驚きを露にする彼女もといシュア
重苦しい雲に包まれた暗いこの街で、彼女の存在だけがわしには光って見えた。

「カクも雨宿りしに来たんだね。でも全然止む気配ないなぁ…」

困った様に眉を下げて空を仰ぐシュア
本当は雨宿りをしに来たのではなくお前さんと一緒に居たくて来たのじゃが…。
わしは敢えて訂正せず、ただ黙って上着を脱ぐとそっと彼女の華奢な肩に掛けてやる。

「カク?」

「肌寒いじゃろ?風邪でも引いたら大変じゃ」

「そ、そんな、悪いよ。カクが風邪引くよ?」

「大丈夫じゃ、わしは丈夫じゃからな」

ニッと笑顔を向けて遠慮するシュアを制すると彼女は礼を告げて大人しくわしに従った。

「ふふ、カクは優しいね」

わしの上着を手繰り寄せつつ微笑むシュア。少々雨にうたれ水滴が散りばめられた髪は煌めきを帯びて彼女の美しさをより一層引き立てている。
わしはその柔らかな髪を指に絡めると先刻の笑顔とは一変、真剣な眼差しでシュアを見据えた。

シュアだから、じゃ」

高鳴る鼓動音は雨音が掻き消してくれるから有難いもんじゃ。
あんなに嫌っていた雨なのに、今は降り続いて欲しいなんて思える。
こうしてシュアとの時間を過ごせるのなら、雨も悪くない。
PR

プロフィール

HN:
新堂モラトリアム
性別:
女性
自己紹介:
当サイトは個人ファンサイトであり原作者様・出版社様・公式関係者様とは一切関係がありません。また著作権侵害を目的としたものではありません。公共PCからの閲覧、オンラインブックマーク、公式サイトとの同窓閲覧、中傷、荒らし、サイト内の文章や画像の無断転載や模倣等はご遠慮ください。閲覧は全て自己責任となりますので苦情は一切受け付けません。マナーを守って楽しめる方のみどうぞ。

NAME CHANGE

ブログ内検索

ご意見があればお気軽にどうぞ